サミュエル・D・ハンターの『ザ・ホエール』は、シープドッグ・シアターで初めて日本上演され、この痛切で深いヒューマン・ストーリーを東京の観客に届けた。本作品は、アイダホの小さなアパートで世間から隠れるように暮らす、引きこもりで病的な肥満の英語教師チャーリーを主人公として描かれている。別居中の10代の娘エリーとの絆を取り戻そうと必死なチャーリーは、人生の最期に意味と許しを求めて、償いの旅に出る。
この作品は、2022年にダーレン・アロノフスキー監督、ブレンダン・フレイザー主演で映画化され、アカデミー賞を受賞した。主演のブレンダン・フレイザーはチャーリー役でそのキャリアを決定付けた。フレイザーはその変幻自在の演技でアカデミー賞主演男優賞を受賞し、映画自体も複雑な登場人物と難しい題材を繊細かつニュアンス豊かに描いたことで批評家から絶賛された。
シープドッグ・シアターの『ザ・ホエール』上演は、戯曲の起源に敬意を表するだけでなく、そのテーマの普遍性を際立たせた。字幕付きの日本初演は、パンデミックの影響から抜け出す上で極めて重要な作品であり、劇団にとって3年ぶりの上演となった。